2009年8月22日土曜日

コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?

はじめに
管理会計は現場をイメージしないとだめ

プロローグ―三度目の経営危機
業績の浮き沈みは、どの会社にもあることですよ。どう乗り切るかが経営者の腕前です

1 見えない赤い糸なんて存在しない―20%が80%
会計は騙し絵、鵜呑みにしてはいけない/管理会計は、経営、業務、法律、税金、情報技術、人の感情などと複雑に絡んでいる。幅が広いだけでなく、奥も深い/愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ/会計に携わる人たちは、「売上と費用は赤い糸で結ばれている」と信じている。馬鹿げた幻想だ。そう思っているなら経営者失格だよ/活動の20%が80%の成果を生む。残りの80%は20%の成果しかもたらさない/公準は証明不要な前提/業務データを会計仕訳に置き換えた瞬間に、会計と業務は分断されてしまう

2 何もしなくても腹は減る
カルネデアスの舟板を知っていますか? 彼は無罪なんですよ/派遣社員は外注費ですよ/シャンデリアが蛍光灯だったら、クレジットカードの署名に100円ボールペンを出されたら、15000円を払う気になるかい?/赤字解消に人件費だけを減らすのは、ダイエットのためにワインとチーズだけ食べるのと同じ/80%の活動は20%の価値しかもたらさない。費用をどのように使うかが問題なのだ/価値を生まない活動は減らさなくてはならない/業務費用≒固定費? スループット会計でしばしば使われる概念/活動基準原価計算(ABC/M)

3 決めたルールは勝手に変えてはいけない―直課と配賦
ブランド別P/L(セグメント別)/高級フレンチ型、餃子屋型/ワークシェアリングですか/部門共通費でもできる限りブランドに直課すべきというのが、由紀の考え方なのだ。勝手に変えてはいけない/真奈美が現場を知らないことの危うさに気づいた。会計数値が歪んでいることすら分かっていない。現場をじっくり見せるしかない

4 外からでは何も見えない

5 工場には現金が埋まっている
利益ではなく儲け。営業CFを15億円増やさないと借金は返済できないのです/「問題を解く鍵は現場にある。だから、シャーロック・ホームズのように現場に行きなさい」/工場がブラックボックスになっていて、ブランド別P/Lからは何も見えませんね/3月末の仕掛品在庫は売上高の33日分でした/儲かっている会社は、在庫が風のごとく吹き抜ける/在庫は現金の仮の姿。工場には大量の現金が埋まっていることになる

6 CFはウソをつかない
デュー・デリジェンス/毒まんじゅうは美味しく見えるものだよ/製品種類の増加は経営にマイナス/①在庫が増える(資金繰りに支障)、②段取り替えの回数が増える、③売れ筋製品が不足、売り損じ/営業担当は、多品種、在庫過多バイアス/誤解しないでください。私は売上を増やさなくていい、と言っているのではありません。会社全体を考えると明らかにマイナスだ、と言いたいんです/利益と儲けがねじれている/いずれにせよ、営業CFがマイナスというのは深刻な状態だ/FCFが赤字ですから、配当は見送るべきでした。P/LとB/Sを見たときとは全然印象が違います/質のよい利益とは、CFの裏づけがあり、持続可能な利益だ/利益と営業CFのねじれの原因は「運転資本の増加」だ―とくに在庫に注意/リーマン・ブラザーズだってそうだ。従業員の高額給与の源泉は、借入金だったのだ/営業CF△4兆6000億円、財務CF4兆9000億円

7 会計はマジシャンだ
出所が分からない資料に信用性はない/本気で買収するつもりならまずデューデリですね。専門家に調査してもらうんです/同じ決算書なのに債務超過?―外国為替換算会計

8 見えない世界を可視化する
付加価値活動時間は、実際に裁断と縫製作業に使われた時間です。非付加価値活動時間は、作業準備や後かたづけ、手待ちなどに使った時間です/非付加価値活動(NVA)/付加価値を生み出す活動に使われた費用は7.8億円に過ぎなかった。これでは赤字になるのは当たり前だわ。由紀はめまいを覚えた/品種が多く生産枚数が少ないため、どうしても段取りに時間を使ってしまうのだ/ワークシェアリングに最初は反対でしたけど、僕は何も分かっていなかったことを痛感します/活動基準原価計算(ABC/M)/厨房をC/R、ダイニングルームをP/Lで表現/この方法ですと、厨房やダイニングルームでどのような活動が行われているのか、まったく分かりません/各部門での実際活動時間を測定すれば、今まで見えなかった厨房とダイニングルームの活動が見えるようになります/見えるだけではダメで、ABC/M情報を使って無駄な動きをなくすことが大切。そのためには、会計数値を物量(時間や数量)と単価といった要素に分解できることが不可欠/貨幣的評価⇔物量(時間や数量)&単価/管理会計システムに、金額を時間と単価の要素に分解できる仕組みを組み込む必要がある/原価集計単位は「顧客の注文」でなくてはならない/以上から明らかなように、新しい管理会計は情報技術(IT)抜きでは実現できません

9 コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?
一番大切なことは会社をつぶさないこと。それだけ/管理会計は道具に過ぎない、工場を見よ/作業時間が分かれば、工場の中が可視化できるんだね/①水深計では水量は測れない、②コハダは大トロよりなぜ儲かるのか、③うさぎはカメよりなぜ速いのか/仕掛品の枚数に基準単価をかければ、金額が計算できますから/生産日報は実績収集のカギ/①→在庫金額は日々の加重平均とすべき(月末だけでは×)/現金は川に流れる大量の水のように、工場の中を流れている/静止画から動画へ/減らすべきは、月末の仕掛品ではなく、仕掛品全体なんだ/大トロ型からコハダ型へ/②→粗利益×回転率/じゃあ、具体的にどのようなアクションをとるか?

10 うさぎはカメよりなぜ速い?
建物の登記簿謄本を調べてみました。所有者はリース会社でした/為替換算というマジックが錯覚を起こさせた/解決策は各サブ工程の仕掛品を減らすことです。作ったらすぐに次の工程に引き渡すのです。100/ロット→50/ロットにしたら、仕掛品在庫は半分に減りました/コハダ生産方式ですね/材料在庫が多くなるのは、生産も仕入もサバを読んでしまうからです。欠品を恐れているのです/製品在庫もサバ読みが原因でした/在庫の流通スピードを上げて、現金の循環スピードを上げれば、運転資金は劇的に減るでしょう/現金→材料→仕掛品→製品→売掛金→現金/大ロット生産は間違いだったのです/現金増加力/ファイナンス・リース取引においても減損が適用される/利益ポテンシャル(PP)=営業利益/棚卸資産/Jコスト理論…製品ごとの収益性を、当該粗利益と製造に投入された資金量との関係から評価/資金量とは在庫に形を変えた現金の延べ面積。つまり、「コスト×時間」/同じワインでも、1年寝かせて販売するのと、3年寝かせて販売するのでは、収益力が3倍違う(ex.原価1000円、売価2000円)/Jコスト理論では、コスト↓だけでなく、時間↓(時間短縮)も考える/生産方式を1個流しや小ロット生産に変更して、棚卸資産の流通速度を上げれば、運転資金は大幅に減少する

エピローグ
利益とは何ですか?/①業績を測定する指標、②リスク(あるいは不確実性)に対する備え、③将来の投資に対する糧、④従業員の生活を保障する基盤/会社は存続し続けることが一番大切。そのために利益は欠かせない

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