2009年8月24日月曜日

ロングテール(アップデート版)―「売れない商品」を宝の山に変える新戦略

はじめに
ヒットは威力を失った/70年代、テレビ番組に人気があったのは、見られる作品がほかになかったからだ。いい作品だったからじゃない/「全員にフリーサイズ」時代は終わった。マルチ市場だ/多数のミニ市場でできた複雑なモザイク模様/ニッチ商品を手に入れるコストが安くなった/流通コストの下落は、潮が遠のいて水位が落ちることに例えられる。見えざる市場が、消費者の目に触れるようになったのだ/ジュークボックスに入っている1万枚のアルバムのうち、3ヶ月に少なくとも1曲は売れるのは何%だと思う?/98%の法則(80対20の法則?)/1曲が何度も売れるわけじゃないけど、ほぼすべてが少しずつ売れる/スペースが無限にあれば……ヒット商品だけを並べるかい?/98%の法則はどこでも通用していた/3ヶ月に1回しか売れないCDでも、(1000万枚売れるのと同じように)1センチ幅を棚から奪う/その曲線はどこまでいってもゼロにはならない/ロングテールド・ディストリビューション(裾の長い分布)/①テールは思ったよりずっと長い、②テールの商品にも手が届くようになった、③全部足せばニッチ市場は重要な市場になりうる/ロングテールに適さない商品カテゴリは?/驚いたことに、小麦にもLTがあったのだ/潤沢になるにつれ、差別化が進む/アマゾンのジェフ・ベゾス

1 ロングテール―ヒットからニッチへ
10年前だったら『空へ』の読者は『死のクレバス』を知らずに終わっただろう/CD1タイトルを1年に最低4枚は売らないと/すべての人にすべてのものを提供する余裕がない/希少の世界と潤沢の世界/曲線の左側を見てきたけど、右側を向くのだ/曲線はゼロにならない/多くは流通力がなくてタワーレコードにたどり着けない/「最大の金は最小の販売にあり」。グーグルだってそうだ/とても大きな数に、小さな数を掛けると、やっぱり大きな数のまま/流通うコストが下がると水面が下がる。そして隠れていたものが見えてくる/市場にあるアルバムのうち、99%超がウォルマートでは手に入らない

2 ヒットの興亡―融通がきかない文化に縛られて
昔のニッチ文化は趣味よりも地理で決まってしまった/教会は、最高の流通インフラと、活版印刷技術による量産メディア(聖書)を持ってた/マスメディア技術が現れたのは19C中―後/写真、蓄音機、映画/(隣人だけでなく)国中の人々と同じニュースを読む/ピカソの絵とチャップリンの映画/35―50のラジオ黄金時代/スーパーボウルのハーフタイム時に、下水道使用率が決まってピークになった/消費者はメジャーからサブジャンルへ/ウォークマンやディスクマンを捨て、ipodの白いイヤホンをする/リッピング(HDDに取り込む)/白いイヤホンをしている人たちは、コマーシャルのない独自のラジオ放送を聴いているようなもんだ/テレビを話題にした井戸端会議はなくなっていく。『科学捜査班』を見ていたのは15%/ティーボなどのDVRが時間要素を消した。だから同時に見たとは限らないんだ。職場で話題に上がることもない/ハリウッド映画は平均6000万ドル、マーケティングに同じくらいかかる/やるべきでないのは、小難しくすることと、スターを殺してしまうこと/「わずかな人しか金持ちになれないのなら、せめて彼らを超金持ちにしてやれ」。その結果、需要曲線はずっと急になる

3 ロングテール小史―通販カタログからショッピングカートまで
19C後半に始めて登場。シアーズ・ローバック/重い郵便物が1冊どさっと来ただけで、よろず屋の1000倍の商品が手に入る/フォード・システムにより、自動車が大衆化するとシアーズの地方の顧客は、カタログだけで買い物をしなくなった/アメリカは選択肢の多さに病みつきになった/史上初のスーパーマーケット、キング・カレン(30)/まとめ買いにより、輸送と保存の必要性/SMは共産主義の無力を示した/「本当なら裕福な大国だったかもしれないわが国が、あれほど貧しい状態に置かれているとは!」(エリツィン)/700点/20年代→6000/60→14000/80→30000超/現在/フリーダイヤルとクレジットカードはホームショッピング流行の不可欠な要素だった/90年代初頭、ウェブ上にeコマースが登場。通信販売より、簡単で、多く、広く、安い/「特にインターネットで売れるものとは何だ?」(ベゾフ、94年)/アマゾン・コムを、膨大な数の中から欲しい本を簡単に見つけて買える最初の場にするぞ/17万タイトルってそんなに多い? いや、ほんの一部だ/その頃は英語の本は150万点、現在では600万超。大型書店だってそんなもんだ/BN・コム(バーンズ・アンド・ノーブル)/オンライン・ショッピングはアメリカの小売支出の約5%(いずれは15%に達するだろう)/意外なところにLTが―グーグル、マイクロソフト、リナックス、ファイアフォックス、ポルノ、ビール、ファッション、教育/「国家安全保障のLT」

4 ロングテールの3つの追い風
少数のヒットと無数のニッチ/①ニッチはヒットよりもはるかに多い、②ニッチ入手のコストが劇的に下がった、③レコメンデーション等のフィルタが需要をテールへ導く、④需要曲線はなだらか、⑤ニッチを足せばヒットと張り合える、⑥流通のボトルネック等に影響を受けない自然な需要が現れる/3つの追い風―①生産手段の民主化(ブログ)、②流通手段の民主化(アマゾン)、③需要と供給の一致(レコメンデーション)/人気の重心を右へ移動させ、曲線をフラットにする

5 新たなる生産者たち―アマチュア・パワー(1つ目の風)
誰もお金のためにしてるんじゃない/望遠鏡の性能よりも、何人見ているかが重要/オープンソース。「みんなで見ればどんなバグでもささいなことさ」/印刷機→コピー機→ブログ/アレクサンドリア図書館、アリストテレス、『百科全書』、『ブリタニカ百科事典』/ウィキペディア(01)/ブリタニカ12万、エンカルタ6万、ウィキペディア200万(530万)/どうせ当たらない天気予報なんて見ないで空を見たら?/権威なし。すべて正しいとは限らない/『みんなの意見は案外正しい』(スロウィッキー)/おそらくウィキペディアが最もよい百科事典/ウィキペディアとブリタニカはまったく違う生き物/エントロピーの方向を逆さまにして、混沌から秩序を生み出した/ボランティアとアマチュアの大群、ピア・プロダクションの世界/ヘッドとテールではものづくりの動機がまったく違う。ヘッドは貨幣経済、テールは非貨幣経済/露出文化の最大の罪はコピーではなく、原作者を正しく表示しないことだ/著作権に対する見方は立場によって違う。なのに、著作権法は両者の区別をつけない。ヘッドにいるかテールにいるか?/約98%が商売にならない/ルル・コム―自費出版はもう恥ずかしくない/テールの先の作者ほど昼間の仕事を続けなくてはならない/インターネットを出てインターネットに戻る/パンク・ロックは生産への参入障壁を低くした。「うまく弾けなくたっていい」

6 新しい市場(2つ目の風)
PCと古本ビジネス―インターロック(82)/アリブリス設立/古本市場の2/3が教科書(17億ドル)/古本屋1件1件の商売は大きくないけど、(つなげれば)全体は巨大だ/集積せよ―アリブリスはLTのアリゲータ(集積者)/アリゲータたち。グーグル、ラプソディ、iTMS、ネットフリックス、イーベイ、ブログラインズ、ウィキペディア…etc/ハイブリッド小売業(通信販売+インターネット、アマゾン)vsデジタル小売業/限界費用はほぼゼロ。DBに項目を1つ足しても、サーバの容量が数メガバイト増えるだけ/後者のほうがテールが長くなる可能性を持つ/大型小売店を取り込んで、アマゾンの中にバーチャルな在庫の幅を広げる/マーケットプレイス―商品と顧客が同じ場にいなくてもよい/多くの本が、年に1,2冊しか売れない。なら、オンデマンド印刷にする/ビデオ・オンデマンド(VOD)/デジタル版は流通面で有利なのでその魅力には抗えない

7 新たな流行発信者(3つ目の風)
口コミ―ありがメガホンを手に入れた/消費者が強い力を握る時代/集合知(wisdom of the crowd)のパワー/レコメンデーションという道案内/フィルタにかけてノイズを除去。でもどのフィルタも万能じゃないから、いくつも使う/バナナが清涼飲料水より売れてるかなんて知りたくない。ジャンルの中で比べることが重要/雑音が多すぎると市場が成り立たなくなる。だからフィルタは大事/しばしば最高の商品はテールにある。マニアックだからだ。ベストセラーは表面的/ヒットというのまれな例外、つまりブラック・スワンだ/べき法則分布は自然だ。少しの商品がたくさん売れ、たくさんの商品が少し売れる/S/N比。あとはフィルタが役立つかどうか/前置(プレ)フィルタと後置(ポスト)フィルタ―編集者とブログ















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