2009年7月18日土曜日

論より詭弁 反論理的思考のすすめ

内容(「BOOK」データベースより)
著者は、論理的思考の研究と教育に、多少は関わってきた人間である。その著者が、なぜ論理的思考にこんな憎まれ口ばかりきくのかといえば、それが、論者間 の人間関係を考慮の埒外において成立しているように見えるからである。あるいは(結局は同じことなのであるが)、対等の人間関係というものを前提として成 り立っているように思えるからである。だが、われわれが議論するほとんどの場において、われわれと相手と人間関係は対等ではない。われわれは大抵の場合、 偏った力関係の中で議論する。そうした議論においては、真空状態で純粋培養された論理的思考力は十分には機能しない

内容(「MARC」データベースより)
みなさん、今まで、論理的に考えてきて、何かトクしたことありますか?  論理学で虚偽あるいは詭弁と名指されてきた論法を主な材料として、論理的思考をレトリックの立場から批判的に検討する。議論力・反論力が身につく一冊。

序章 論理的思考批判
弱者の悲鳴/威嚇は詭弁ではない/偏った力関係のなかでの議論/動機の詮索/町を行く人の思考と思想家の思考

1 言葉で何かを表現することは詭弁である
事実は並んでいない/配列の効果/得になる場合と損になる場合/事実は連結されてもいない/言葉の黒魔術/事実と意見は区別できない/問いの詭弁

2 正しい根拠が多すぎてはいけない
論証の厚み/根拠のせめぎあい/ラスコーリニコフの2つの議論/心の弱さと議論法

3 詭弁とは、自分に反対する意見のこと
詭弁の定義/勢力のない側の意見のみが詭弁として非難される/チョムスキーの不満/ピンカーの言語決定論批判

4 人と論とは別ではない
人に訴える議論/人に訴える議論の5分類/「関係がない」と「論点のすり替え」/論点をすり替えて何が悪い/立証責任の移動/発話内容についても怪しい/レトリックの側からの説明/空しい結論

5 問いは、どんなに偏っていてもかまわない
先決問題要求の虚偽/循環論法/「名づけ」による先決問題要求の虚偽/君はもう、奥さんを殴ってはいないのか?/凶弾する値打ちもない

序章 論理的思考批判
「ああ、詭弁で結構だ」
出入りの業者に剣突を食らわせた社員は、上司の前では小さくなっている

1 言葉で何かを表現することは詭弁である
似非フェミニストが「男女」という文字の順序が気に食わぬと思っても、これを解決するどんな方法もない
独創的だが論証に難点がある/論証に難点があるが独創的だ
私に言わせれば、こんなパンフレットを書く人間は、良心的なのではなくただの馬鹿である
A子は物静かだ/A子は陰気くさい
「もし何かをほめたたえようと思えば、同じ種類のものの中で、よりすぐれたものから比喩をとらなければならないし、けなそうとすれば、より悪いものの中からをれを選ばなければならない」(アリストテレス、『弁論術』)
自分にとってもっとも都合のよい言葉を選ぶことは、説得を目的とするレトリックの立場から言えばむしろ当然
われわれが言葉を発するや否や、われわれは聞き手に世界をわれわれと同じように見るよう仕向けているのである
事実と意見を区別することはほとんど不可能

2 正しい根拠が多すぎてはいけない
レトリックは正しいことの証明ではなく説得の手段
論理的に正しくても心理的におかしいことがある

3 詭弁とは、自分に反対する意見のこと
定義とは限定することだから、広い定義などほとんど意味はない
そもそも「説得する」ことと「騙す」こととの間に明確な線をひきようもない
たちの悪い人は、相手に対する定義の要求を武器の1つとして使用する
定義を求めれば相手は困るはずだと予想しての幼稚な反撃に過ぎない
「相手を不安定にする問い」
「あなたにとって『知的である』とは、何を意味するのですか?」
正当な定義の要求と引っ掛けるための定義の要求
われわれが論理的であるのは、論理的でないことが不利になるときだけでよい
詭弁とは、味方が使った場合は言葉のあや、敵が使った場合のみ詭弁となる
自分たちに反対する意見のみが、詭弁と呼ばれる資格を持っている

4 人と論とは別ではない
詭弁のタイプ
それぞれの区別はさほど明確なものではない
論理的思考では発話者は装置にすぎない(内容のみが問題となる)
社会では論理よりも常識が優先される
ルソーが父親としては最低だったとしても『エミール』までもが下らないとはいえないのと同様
誰が語ったかということは、何が語られたかということ以上に説得に大きく影響する場合がある
私が思いつきで口にしたこととまったく同じものが、ヴィトゲンシュタインの遺稿から発見されたとすれば、それらは同じ意見ではない
人を持ってその論を評価することは必ずしも誤りとはいえない

5 問いは、どんなに偏っていてもかまわない
自分の判断は真であると確定させてしまえば、それが真であることを理解できない側に問題があることになってしまう(先決問題要求の虚偽)
視察/見物
「君はもう奥さんを殴っていないのか?」(多問/複問の虚偽)
「君はK西のあの下らない詭弁の本を読んだのか?」
「K西の本のどこが下らないのですか?」(相手に立証責任を負わせる)
「私はK西の本が下らないとは思いません」と答えてはならない
絶対にしてはならないのは、相手側に立証責任があるときに、こちらがそれを引き受けてしまうこと
不当予断の問い

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